リスク|【統計学・統計解析講義応用】
リスクとは
リスクとは、将来時点におこる不確実性に起因する損失のことと定義されていますが、起因する内容によってさまざまなリスクが考えられます。
金融リスクには、市場(マーケット・レート)リスク、信用(クレジット)リスク、決済(オペレーション)リスク、流動性リスク、法務リスクなどがあります。
伝統的な金融商品においても、リスクは存在しますが、デリバティブにおいては、レバレッジがきくことと、価値の変化が非線形なものもあることに特徴があります。
特に後者は、リスク管理を行っていくうえで注意すべき性質です。
そもそも、取引を行っていくうえで、自分がどのようなリスクを負っているかは十分に認識しておくべきものです。
これは、デリバティブに限った話ではありません。
リスクの種類
市場リスク
市場リスクは、金融資産と負債の価格(または、その変動率)が変動することによって生じるものです。
また、市場リスクには、いわゆるベーシス・リスクやガンマ・リスクも含まれています。
ベーシス・リスクは、ヘッジ等に用いられる商品間の差分の関係の変動に起因するもので、ガンマ・リスクは原資産の価格の動きとその派生商品の価格の動きとの非線形関係に起因したリスクです。
派生商品を多く保有することはこのベーシス・リスクやガンマ・リスクにさらされていることになります。
市場リスクは、絶対損失と相対損失とによる計量があります。
絶対損失額は円でいくら損する可能性があるかを測るものですし、相対損失率はベンチマークなどに対する比率をとらえたものです。
前者が全体の利益率に対する変動率に着目していることに対して、後者は、トラッキング・エラーに着目したものです。
線型リスクに加えて、ベーシス・リスクやガンマ・リスクも重要な要素です。
バリューアット・リスク(VaR)は、市場リスクを補足することであり、リスク管理者が適切な対処をとれることを主たる目的としています。
信用リスク
信用リスクは契約の相手が契約上の役務を履行できなくなった場合に発生するリスクをとらえるものです。
同一の契約を他の契約者と結ぶことによって生じる費用(再構築費)によって計測されます。
さらに一般的にいえば、契約相手が信用格付会社から格下げの宣言を受けたときに取引内容の市場価値が低下することによって生じるリスクということができます。
社債やローンの場合には額面金額が損失全体になります。
一方、派生商品の場合には、その市場価値は通常想定元本よりもかなり低いため、時価価値が正である場合にのみ損失を考慮に入れることになります。
ローンなどに比べて市場の環境による変動が大きくなります。
信用リスクはこの他に、決済時に生じる決済リスクも含まれます。
これは、契約相手が、支払いをした直後に倒産することによって生じるもので、外国為替取引では起こりうるものです。
外国為替取引では、決済時刻が、時差によって異なっているからです。
流動性リスク
流動性リスクは、商品自体が市場であまり活発に取引されていないことによって生じるものです。
これを定量的に評価することは難しいことです。
リスク管理の立場からは、特定の市場商品での建玉に制限を加えることで行えます。
オペレーション・リスク
オペレーション・リスクは、決済などの執行ミスに起因するものです。
執行ミスは、後方事務セクションの人為的な誤りやシステム上のエラーから起こるものです。
これを防ぐには内部の監査体制強化などで対応することが必要です。
法務リスク
法務リスクは、取引が国をまたいでいるために当該取引の解釈が異なることで生じるものです。
特に、取引相手が破産した場合の相殺条項など微妙なこともあり、注意が必要です。
これらはどれも重要なものであり、この金融リスクを定量化し、管理・運営していくことになります。
市場リスクの中身
金利リスク
金利の変動により生じるリスクで、金利感応商品である債券(国債、社債、金融債)、ローン、預金などに、またデリバティブでいえば、スワップ、キャップ/フロアなどにあります。
為替リスク
取引が一国内だけであれば、為替変動について考える必要はありませんが、取引が多国間にまたがっている場合には、為替変動による資産・負債の変動幅は大きなものとなるため、金利リスクと同様に配慮する必要が出てきます。
相関リスク
異なる資産間(たとえば、短期金利と長期金利、金利と為替など)の変動性について、お互いにどのような影響を及ぼしあっているかなどを表現するために考えるものです。
相関性も大事な要素で、分散投資などを行う有効性などを検証する際にも役立つ指標です。
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