交絡と交絡要因の統計学【統計解析講義基礎】

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交絡と交絡要因の統計学|【統計学・統計解析講義基礎】

交絡と交絡要因の統計学【統計解析講義基礎】


目次  交絡と交絡要因の統計学【統計解析講義基礎】

 

 

交絡と交絡要因の統計学

 

統計的な関係から因果関係を考えると、実際には関係がないのにあたかも因果関係があるかのように見えてしまうことがある。

 

たとえば飲酒と肺がんの関係を考えてみよう。

 

ふつう大量の飲酒は、肝障害をはじめ、さまざまな疾患の原因となると考えられている。

 

そこで肺がんの罹患率や死亡率についてもそうかどうか、大量飲酒者とそうでない人を何十年か追跡調在して比較してみると、飲酒者の方に肺がんが多い。
しかし、今のところ飲酒が肺がんを増やすとは考えられていない。

 

飲酒が肺がんを引き起こすわけでもないのに、調査で飲酒者の方が肺がんが多かったのは、喫煙が、飲酒と肺がんの双方に関係しているためである(図1)。

 

交絡と交絡要因の統計学【統計解析講義基礎】

 

このような現象を、やや固いことばだが、「交絡」といい、喫煙は飲酒と肺がんの関係の「交絡要因」とよぶ。

 

ある病気の原因を探る場合や、ある治療法が有効かどうか訓べるというような場合は、結局因果関係を調べているわけであるが、その際には交絡のことはつねに考慮しなければならない。

 

たとえば、米国では黒人の方が白人に比べ平均寿命が短く、人種による遺伝的な寿命の差が議論されたことがあった。

 

しかし、収入などの経済的レベルが同じ層を集め比較すると、白人と黒人の寿命の差は認められなくなった。

 

貧困は疾病や死亡など健康に大いに関係しているが、これが同時に人種間の差にも関係しているため、交絡要因となって、実際には直接の関係がない人種と寿命の関係となって見えたのである (図2)。

 

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予防医学でも似たような例がある。

 

健康診断を受けた人の方が受けなかった人より長生きするという。

 

しかし、健康診断は全員受けるわけではなく、得てしてふだんから健康に気をつけ、喫煙しない、運動や適切な食事を心がけるといった人のほうが進んで健康診断を受ける。
また、一般には社会的経済的に恵まれた人の方が、健康診断を受ける機会が多い。

 

そこで、健康診断には直接寿命を延ばす効果はなくても、健康診断受診者の方が寿命を延ばすような健康習價が多いため死亡率が低く、寿命が長くなる。
ここでは健康な生活習慣が交絡要因である(図3)。

 

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その他、比較する集団間の男女差に加え、人種はもとより学歴や収入も交絡を引き起こすことが多く、調査にあたってはこれらを考慮することが重要である。

 

 

交絡への対処法と悪用

 

ある要因による交絡を防ぐためには、その要因を一定の範囲に限定して比較するという方法がある.

 

たとえば初めに示した飲酒と肺がんの因果関係を調べる際、喫煙による交絡を避けるためには、非喫煙者だけに限って調査を行えばよい.

 

また、年齢や収入など量的に表される要因については、それをいくつかの層に分け、同じ層ごとで比較すれば、年齢や経済による交絡は防ぐことができる.

 

交絡は未知の要因でも起こる.

 

そこで未知の要因による交絡を防ぐためには、無作為(ランダム)化という手法がある.

 

治療の効果を調べるとき、治療群と比較群をくじ引きなどで無作為に割り付ける無作為化比較試験を行うのは、未知の要因による交絡をできるだけ少なくするためである.

 

また、ある要因(たとえば年齢)が比較する集団間で偏っている場合は、その要因について統計的な補正を行った上で比較することも有効である.

 

実は交絡による因果関係の見誤りはつねに起こりうる.

 

すでに因果関係が確定したと思われていたことが、じつは交絡の結果であったということは多い.

 

ところが、この「交絡」を悪用するというケースもある.

 

タバコ会社は喫煙による肺がんについて、珍説を発表した.

 

タバコは肺がんの原因ではないが、人間には肺がんを起こす遺伝子があり、それがヒトにタバコを嗜好させる遺伝子のすぐそばに配列しているというのである。

 

そこでタバコが好きな大は生まれつき肺がんになりやすいのであって、肺がんの原因はタバコではない(図4)。

 

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この論理ではタバコと肺がんの関係に遺伝子が交絡要因として働いて、タバコにがんの原因というぬれぎぬを着せている事になる。

 

たしかに論理的にはあり得ることであるが、人の全遺伝子が解読され、今その機能が調べられているので、やがてはこの珍説の当否に判定が下されることと思われる。

 

 

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