ClinicalTrials.govへの登録方法【統計解析講義応用】

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ClinicalTrials.govへの登録方法|【統計学・統計解析講義応用】

ClinicalTrials.govへの登録方法【統計解析講義応用】


目次  ClinicalTrials.govへの登録方法【統計解析講義応用】

 

 

ClinicalTrials.govへの登録方法

 

データの準備

 

結果データを要約することは,一般的に込み入った作業であり,試験やデータを熟知し,結果を表に要約する作業に熟達していることが要求される.

 

結果を論文にまとめたり,規制官庁にデータを提出したりするのと同様に. ClinicalTrials.govの結果データベースに情報を提出する際には,PIや生物統計学者(biostatistician)がかかわることが必要となる.

 

提出する情報は,誤りがなく,正確であり.さらに,当該試験には必ずしも詳しくはなくとも医学文献が理解できる知識を有する閲覧者に対して有益なものでなければならない.

 

データを入力してから正式に提出するまでの間に,試験チームに加わっていない同僚に情報のチェックを依頼して,明確に理解できるかどうかを確認してもらうことも有益である.

 

入力ミスの判定基準

 

アップロードされたデータは.公表する前に無効な箇所はないか,データ内部に矛盾や齟齬はないか,形式が正しいか等のチェックが行われる.

 

まず,データ提供者に対して記載漏れや矛盾がないかどうかを通知するチェックが自動的に行われた後,提出された内容に関して,スタッフが確認を行う.

 

2010年後半の時点で,提出されたデータのうち,修正されずに公開されたものは35%ほどに過ぎない.

 

ClinicalTrials.govのスタッフが発見できる入力ミスもあるが,ClinicalTrials.govにはデータソースがないために確認が行えないものもある(例えば,平均年齢として「832歳」は明らかに入力ミスであるが,「83.2歳」が本当に正しい平均年齢かどうかは不明である.).

 

このようなことから, ClinicalTrials.govの最低限の確認基準だけでは,提出されたデータが有効かどうか,また種々の方針や法令の定めに適合しているかどうかは判定不能である.

 

結果報告と論文公表との関係

 

プロトコールと結果の要約をClinicalTrials.govに報告し,チェックしてもらう目的は,論文が医学雑誌に掲載されるために査読される目的とは異なる.

 

両者とも正確なデータの報告を求める点では共通しているものの, ClinicalTrials.govでは,研究の質や重要性によって掲載を拒むことはない.

 

プロトコールに定められた主要・副次的評価項目とその他,事後解析結果はすべて公表することができる.

 

これに対し,論文の審査では,雑誌の読者にとって関心がある研究に対象を絞っており,著者も編集者も研究の重要な部分に焦点を当てている.

 

学術雑誌の査読では,さらに論文の本文とデータとが整合性が取れているか,論旨や結論は妥当か,などの審査を行う.

 

ClinicalTrials.govでは,解説部分がないため,このような機能はない.

 

2010年11月に, ClinicalTrials.govに掲載された150件の試験を解析したところ, PubMedで検索できたものは,78件(52%)のみであった.

 

すなわち,両者の目的は異なってはいるか,試験とその結果に対して異なる立場から評価することによって, ClinicalTrials.govのデータベースが論文による公表を補完している.

 

解説資料

 

ClinicalTrials.govでは,関連する解説資料を提供しており.その中には,試験の登録および結果報告の要件,データ報告時の確認項目の解説やClinicalTrials.govを検索する際の手引きなどがある.

 

報告のための主要な科学的原則とベストプラクティス

 

評価項目の結果を報告する際の問題点

 

プロトコールおよび登録データに主要・副次的評価項目を事前に明示しておくことは.一貫性のある試験の実施および結果報告に際し.重要である.

 

ClinicalTrials.govにおいて,主要評価項目は,「試験における実験的変数の効果を測るための,特定の主要測定値」としている.

 

「臨床試験報告に関する統合基準」(Consolidated Standards of Reporting Trials,CONSORT)は,ランダム化臨床試験の結果報告手順について定めた国際的基準であるが.主要・副次的評価項目(secondary outcome measures)について「いつどのように評価するかを含めて,完全に規定されなければならない」としている.

 

ClinicalTrials.govの結果データペースに報告する評価項目データには,4種類のレベルの情報と測定日時が含まれている必要がある.

 

また. CONSORT声明では,主要評価項目は,「利害関係者にとって最も関心が高いとみなされる項目であり,通常は被験者集団のサンプルサイズを計算する際に用いられるもの」としている.

 

しかし, 2,178件の臨床試験の報告記録を分析したところ,試験当たりの主要評価項目数の中央値は1であったものの,複数の主要評価項目が含まれている試験も多くあった(最多の主要評価項目数は71) .

 

このことから,試験に関わる研究者がこの用語をいろいろな意味で用いている可能性があることや,論文作成の際に評価項目が選択的に報告されている可能性が示唆される.通常,論文では.多数の主要評価項目を報告することはないからである.

 

ClinicalTrials.govでは,副次評価項目について,「介入を評価するために用いられるその他の重要な項目」と定めている25. 2,178件の試験を対象とした上述の分析では,試験当たりの副次的評価項目数の中央値は3であり,最大は122であった.

 

登録に際しては,すべての主要・副次的評価項目を報告することが義務付けられていることから,副次的評価項目と「その他の」評価項目(「三次的評価項目(tertiary outcome measure)」と呼ぶ場合もある)とを区別する線引きを検討する必要もある.

 

試験の登録および結果の報告という観点からは,解析計画書に始めから記載された評価項目は副次的評価項目であり,それ以外の探索的評価項目は「その他」の評価項目である.

 

 

解析集団に関する問題点

 

一般的に,試験結果の報告に関しては,評価項目を分子,解析集団を分母として捉えることができる.

 

例えば,心筋梗塞を発症した患者数を評価項目とした場合.各部(または全体の解析)の被験軒数に対する心筋梗塞発症被験者数の割合を俳問で比較する.

 

試験の報告に対して構造化したフォーマットを用いていることによって,1つの試験の中での解析にあたって,どの程度,多様な解析方法が使われているかが明確化されるようになってきた.

 

ClinicalTrials.govでは.結米の解析法に関する指示はない(ITT[Intention-to-treat : 治療意図に基づく]解析集団対プロトコール適合[per protocol]集団など).試験で実施された内容が明らかになることのみを目的としているためである.

 

解析結果が妥当であるか否か,結果に基づいて判断できることが重要である.

 

ClinicalTrials.govの利用方法

 

対象者

 

ClinicalTrials.govは国民全般に対して利益をもたらすが,閲覧者によって興味の対象となる部分は様々である.

 

例えば.プロトコールや適格条件の要約は.一般の人々や一般市民にアドバイスを提供する立場にある人にとって有用である.

 

一方,各試験の要約された結果の災所と限界を理解している研究者や系統的レビュー(systematic review)を行う学者にとっては.現状の形体であっても有益だろう.

 

研究者が自分で試験を計画する場合. ClinicalTrials.govに開示されたデータが役に立つことがある.

 

例えば,同じ介入手段や類似の被験者集団を対象とした試験が実施中か,それとも終了し結果が公表されているかがわかる.

 

また. IRB委貝や研究者は.関連する既実施試験をできる限り調整することによって.予定された臨床試験のリスクと便益について十分な評価を行うことができることになる.

 

研究者.系統的レビュー実施者や政策立案者は. ClinicalTrials.govのデータを用いて,臨床試験全般に関わる様々な問題を検討することができる,

 

例えば.研究者たちは. ClinicalTrials.govのデータを用いることにより.試験のグローバル化に関する問題、都合が悪い結果を恣意的に公表しないという問題、登録された評価項目と文面に発表された評価項口との差異といった問題を検討してきた.

 

ClinicalTrials.govの検索のヒント

 

ClinicalTrials.govの基本検索では.登録された試験に関し,任意の文字列で検索が可能である.

 

詳細検索オプションでは.データベースの構造を利用して,更に詳しい検索が可能となる,

 

検索には. Essieコンセプト検索エンジンが使われている.この検索エンジンでは,同義語バンクを用いており.例えば,「paxilパキシル」について検索を行うと. paroxetine (パロキセチン), BR29060, FG-7051やSeroxat (セロキサット)などの同義語が使われている試験がヒットする.

 

また,「heart attack (心臓発作)」で検索すると.「myocardial infarction (心筋梗塞)」という語に関連した試験が出てくる.

 

このようにClinicalTrials.govのサイトの検索インターフェイスは,非常に柔軟であり,利用者の様々な必要性,技能や経験の段階に応じた検索が可能である.

 

ClinicalTrials.govを用いて臨床試験の全体像を把握する際のポイント

 

試験情報に関し, ClinicalTrials.govが最大の情報源であることは論を待たないが,すべての臨床試験が掲載されているわけではない.

 

このデータセットは,現在米国や国際的に認められた指針に基づいたものだからである.

 

このような指針は,時間の経過とともに変遷しており.それに応じてサンプリングのバイアスにも変化が生じている.

 

グローバル企業や米国企業がスポンサーである医薬品や医療機器の臨床試験は.ClinicalTrials.govによりほぽ完全に網羅されている.

 

NIH研究費により実施される医薬品や医療機器の臨床試験も概ね登録されている.

 

しかし,世界全体における臨床試験の実態を推測しようとする場合には,注意が必要である.

 

臨床試験改革イニシアティブ(Clinical Trials Transformation Initiative, CTTI)は,ClinicaTrials.govのデータに基づいて,「解析可能(analysis-ready)」データセットを作成した。これは,研究者がデータを利用しやすくするための試みである.

 

臨床試験の登録制度の今後

 

一連の法整備や対策の結果,臨床試験の登録制度は,国際的なレベルでも標準的な制度となった.

 

結果の要約を公開する制度ができたことにより,新たな時代を迎えたと言える.

 

臨床試験の公開要件は,今後とも変遷を遂げていくであろうし.公開される情報量が増えていくにつれて,登録されたデータを活用する新たな方法が考えられるであろう.

 

しかし,臨床試験登録制度の有用性,すなわちデータの品質と正確さを左右するのは,試験依頼者や研究者の熱意と誠意である.

 

 

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