公正の原則【統計解析講義応用】

公正の原則【統計解析講義応用】 | 統計解析 - ChatGPT・Python・エクセルを使った講義で最速マスター

セミナー詳細                    解析ご相談                    LINEでお友達

公正の原則|【統計学・統計解析講義応用】

公正の原則【統計解析講義応用】


目次  公正の原則【統計解析講義応用】

 

 

公正の原則

 

「ベルモンドレポート」で明確化されている第3の一般的原則は,公正に関するものである.

 

この原則は,参加者が公平に処遇される権利とプライバシーの権利を含み, ANAガイドラインの原則4および5に含まれる.

 

公平な処遇の権利

 

研究参加者は,研究参加前,参加中,参加後を問わず,公平かつ公正に処遇される権利を有する.

 

公平な処遇としては,次の特性があげられる,

 

・いかなるリスクも利益も均等に共有できるような参加者を,公正かつ差別なく選択すること参加者の選択は研究の要件に基づくべきであり,特定の人々の立場の弱さや妥協しやすさに基づくべきではない.

 

・人間の多様性をあらわしている文化的様式やその他の様式に敬意をはらう.

 

・研究参加を断った人,もしくは参加に同意したのちに研究への参加を撤回した人を,先入観をもたずに受けとめる.

 

・研究者と参加者とのあいだのすべての契約を尊重し,それらを記述した手順および約束した給付金の支払いを厳守する.

 

・参加者は,研究のいかなる時点においても,研究スタッフと接触して情報を明瞭に知ることができる.

 

・いかなる身体的もしくは心理的損害があった場合も,参加者は適切な専門家の助力を得られる.

 

・必要があれば公聴会を開き,研究前は伏せておいた情報を公表したり,研究中に生じた問題を明らかにする.

 

・常に丁重に気を配って対処する.

 

プライバシーの権利

 

人間を対象とするほとんどすべての研究には,人々の私生活へのある種の侵害がみられる.

 

研究が必要以上に侵害しないこと,および研究をとおして参加者のプライバシーが保たれることを,研究者は保証する必要がある.

 

参加者には,自分が提供したいかなる情報も,極秘に保たれるよう求める権利がある.

 

これは,匿名または他の守秘手順をとおして可能である.

 

匿名の保持(anonymity)は,研究者が,参加者とその人のデータとを結びつけられない場合にも可能である.

 

たとえば,質問紙をナーシングホームの入居者グループに配布し,入居者の身元確認情報なしに回収した場合,回答は匿名であると考えられる.

 

ほかにも,研究者が診療記録を検討したとき,あらゆる身元確認情報(例:名前,住所,社会保障番号など)が削除されていれば,匿名によって,参加者のプライバシーの権利が守られるだろう.

 

匿名の保持が可能な場合は,研究者は,それに努めるのが望ましい.

 

匿名の保持の例

 

トーマス,スタムラー,ラフルニエ,ドゥマーラ〔Thomas, Stamler, Lafrenier, & Dumala, 2001〕は,インターネットを使って,世界各国の女性を標本として,乳房の健康教育と検診の認知に関するデータを収集した.

 

質問紙を含むウェブサイトをつくった.回答者に身元確認情報を求めなかったので,その匿名性は保証された.

 

匿名の保持が不可能な場合は,適切な守秘義務(秘密保持)の手順(confidentiality procedure)を行う必要がある.

 

参加者への守秘義務の約束とは,参加者が提供するいかなる情報も,参加者を特定できるような方法で公表しないこと,また,他者が利用できないことを誓約することである.

 

これは,研究情報を,部外者と,または参加者を知っている人々(例:家族,医師,他のナース)と共有すべきではないことを意味している.

 

ただし,研究者が情報を共有する明確な許可を得ている場合は別である.

 

 

守秘義務を保証するために,研究者が講じることができる手段には,以下のようなものがある.

 

・参加者から身元確認情報(たとえば,名前,住所)を得るのは,必要不可欠な場合のみに限る.

 

・識別番号(ID番号)を各参加者に割り当て,実際のデータに,他の身元確認物ではなくID番号を添える.

 

・身元確認情報を鍵のかかるファイルに保管する.

 

・身元確認情報を利用できるのは,知っておくべき少数の人々に制限する.

 

・身元確認情報をコンピュータファイルに入力しない.

 

・身元確認情報を可能なかぎりすばやく破棄する.

 

・データまたは身元確認情報を利用できる研究スタップ全員が,守秘義務の誓約書に署名する.

 

・研究情報を全体として報告する.

 

特定の参加者についての情報を報告する場合は,偽名をもちいるなどして,その人の身元を偽る手段を講ずる.

 

研究参加者から複数の機会でのデータ収集を計画している研究者(または関連づける必要のある複数のデータの書式を利用する研究者)は,匿名は不可能だと思っているかもしれない.

 

しかし,研究参加者自身が自分でID番号をつくることで,それが可能となった.

 

たとえば,研究参加者が,IDコードとして,誕生年と母親の旧姓の最初の3文字を使う方法(例:1946CRU)を教わる.

 

このコードは,参加者が記入したすべての書式にもちいられるが,研究者は,参加者が誰かということを知らない.

 

質的研究者は,研究参加者のプライバシーを保護するために,特別な予防策を講じる必要もあろう.

 

質的研究では,匿名の保持はまず不可能である.

 

一般に,研究者が研究参加者と親密になるからである.

 

さらに,質的研究の掘り下げる(in-depth)性質ゆえに,実際,量的研究よりも,プライバシーを侵害する度合いが強いであろう.

 

たとえば,参加者の自宅で時間を費やしていると,研究者は,研究参加者が共有しようとしている公的行動と,データ収集の過程で無意識に現れる私的行動とを,分離するのがむずかしいだろう.

 

最後の問題は,研究報告のなかで,参加者の身元をうまく隠すことである.

 

回答者の人数は概して少ないので,質的研究者は,身元を守るためにかなりの予防策をとる必要があろう.

 

単に偽名をもちいるだけではなく,情報提供者の職業や診断名といった特性についての詳細な情報も明らかにしないことを意味する.

 

質的研究者は,その報告のなかで,身元を特定する情報を少し変更し,かなり一般的な記述にする必要があろう,

 

詳細な記述によって身元が特定されないように,たとえば,卵巣がんの49歳の骨董品商を,「小売業を営む中年のがん患者」と記述する.

 

 

公正の原則【統計解析講義応用】


セミナー詳細                    解析ご相談                    LINEでお友達

公正の原則【統計解析講義応用】

公正の原則【統計解析講義応用】