概念分析【統計解析講義応用】

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概念分析|【統計学・統計解析講義応用】

概念分析【統計解析講義応用】


目次  概念分析【統計解析講義応用】

 

 

概念分析

 

生命倫理研究の最も重要な種類の1つに概念分析(conceptual analysis)がある.

 

概念分析は,いつも低く評価されたり,忘れられていたりするのだが,生命倫理や臨床試験そのものを発展させるためには不可欠のものである.

 

その主な例の1つが,ランダム化比較試験(randomized controlled trial. RCT)の正当化である.

 

多くの人は, RCTが正当化されるのは,医師が「帰無仮説(null hypothesis)」を立て,それを信じることができるときである,と主張している.

 

すなわちRCTは,医師が1つの治療法が他の治療法より優れていると信じる根拠がなく,さらに,その双方よりも良い治療法があると信じるに足る根拠がないときに正当化されると考えられる.

 

このような状態を「均衡(equipoise)」と呼ぶ.

 

しかし,実際には,均衡という概念は大変問題の多いものであるということが次第に明らかになった.

 

まず,臨床試験の倫理的正当化は,医師個々人の見解を拠り所としていると言われており,より具体的には,多くの臨床試験において.試験を担当する医師自身が均衡の状態は保たれていないと思っているため,試験に患者を登録できないらしい.

 

実際,著名な臨床試験デザインの理論家の中には,以下のような見解を支持している者もいる.

 

もしある医師が,新しい治療法(A)が他の治療法(B)よりも優れていると考えているか,そう信じる十分な根拠がある場合,彼は治療法Aと治療法Bの比較試験に参加することはできない.

 

倫理的にはこの医師は治療法Aを施行する義務がある.

 

これに対し. 1987年にBenjamin Freedman が,「理論的均衡(theoretical equipoise)」といわゆる「臨床的均衡(clinical equipoise)」とを区別したことにより,事態は大きく進展した.

 

理論的均衡は,2種類の治療法に関する証拠がまったく平衡しているときに成立する…理論的均衡は圧倒的に脆弱なものだ.なぜなら試験の片方の治療群を支持する証拠が僅かでも得られれば容易に壊れてしまう.

 

理論的均衡はまた,研究者の気まぐれな考えや直感に対して非常に敏感である.

 

脆弱さとはつまり,理論的均衡は研究者が,本当の差異が存在しようとしなかろうと.2種類の治療法の差異を認識するとたちまち崩れてしまうということである一理論的均衡は個人的かつ奇妙なものであり. Schaferの言葉を借りれば,医師が「先入観あるいは直感と呼ばれるもの」をもったときに壊れてしまうのだ,

 

Freedmanによってもたらされた進歩は,理論的均衡と,彼が臨床的均衡と呼ぶものを,注意深く区別したことである.

 

臨床的均衡は,1人の医師の中で信念がまさに均衡している場合や蓄積された証拠が2つに分かれている場合に起こるのではなく,むしろ,研究者集団の中での見解が均衡している状態を示すものである.

 

臨床医集団の中には,ある病態に対してある臨床医は治療Aを好み,また他の臨床医は治療Bを好む,というように意見が分かれることがある.

 

どちら側も.相手側がその立場をとる証拠を支持していることは認識しているが,それでも自分たちの見解のほうが正しいと信じている.

 

そこに存在するものは…提起された病態に対する治療方法に関して熟達した誠実な臨床医の間でも意見の一致がみられないということなのだ.

 

臨床的均衡は,データが不明確.すなわち専門家の問でもコンセンサスが得られていない場合に成り立つ.

 

臨床的均衡は,1つの治療法に対して思い入れやえこひいきのある研究者や臨床医に対しても適用できる.

 

Freedmanの洞察は,均衡はある専門家集団もしくは社会の間に存在するものであり,一個人の中に存在するものではないということである.

 

Freedmanの洞察は一見,取るに足らない些細なことのようにも思えるが,臨床試験の正当化がいかなる個人の見解にも依存しないということを明らかにしたという意味では非常に説得力のあるものであった.

 

臨床的均衡の考え方は. RCTの倫理的正当化に対する明確な理論づけを提供し,医師が患者をランダム化臨床試験に登録するのは倫理的でないと主張する人たちに対して最も強力な反論となった.

 

概念分析の重要性を示す2番目の例は,強制,不当な勧誘,利己的な利用の問題の中に見出すことができる.

 

これらは,研究倫理に対する批判的概念がある.強制的な同意(coerced consent)は不本意であり.それゆえ無効である.

 

不当な勧誘に応じた同意もまた,無効である.

 

研究被験者のより良い判断に対し,不当なリスクや志願を促すような過度の現金や現物支給はすべきではない.

 

自由な選択を行使するという人の能力を徐々に蝕むような報酬や謝礼金は,同意の法的効力をなくす.

 

これらの3つの概念は,しばしば混同され,融合されて,誤解や詐欺のような他の概念とごちや混ぜにさえなる.

 

 

開発途上国において実施されている臨床試験のほとんどの場合において,被験者が強制を避けることは難しい.

 

研究に参加することの医学的理解が相対的に乏しく,欧米の医師の提案に抵抗する気がなく.たぶん自分たちが受ける治療を誤解したまま手術され,研究に参加することで副次的便益を得る可能性のあるアフリカの被験者たちは,強制の影響を受けやすい,

 

強制は,彼らが選択したものを問わず,より困窮するよう脅かすものである.

 

古典的な例は,強盗の「命が惜しかったら金を出せ」という科白である.

 

この種の強制は,研究においては極めて稀なことであり,強制による告発は疑ってかかるべきである.

 

逆に,不当な勧誘とは,脅迫ではなく,過剰な見返りによって,誰かを過度のリスクにさらすことである.

 

不当な勧誘は.リスクが高すぎる何かをするための非常に魅力的な100万ドルの見返りである.

 

これは,見返りが少なすぎる利己的な利用と対比されるものである.

 

これらの概念の区別は,単なる哲学的詭弁にとどまらない重大なことであり,調査研究の質問紙をデザインするのに重要である.

 

ある人がリスクを理解しているか尋ねることは,強制または利己的な利用があったかどうかについて尋ねることではない.

 

同様に,これらの概念を見分けることは.倫理的問題を解決するための正しい対応を考案するために重要である.

 

強制の解決法は,脅威を取り除くことであり,不当な勧誘の解決法は,見返りを少なくし,リスクを減らすことである.

 

利己的な利用の解決法は,与えられる見返りを増やすことである.

 

概念分析が役に立つ3番目の例は,医師一患者関係(physician-patient relationalship)の明確化である.

 

1980年代,医師一患者関係の概念が二極化した.医師は家父長主義(paternalistic)であり.自らの価値を患者に強要していた.

 

一方,批評家や多くの裁判官は.そうではなく,患者の自律性に基づく考え方を示した.

 

つまり,「患者が自分の価値観によって選択できるよう,医師は選択肢を与えなければならない」という考えである,ある裁判官はこう述べている.

 

自分の利益が得られる方向へ自分自身で方向性を決めることができるのは.医師ではなくて患者の特権である.

 

患者に自分自身の計画を立てさせることを可能にするには,当然なことであるが,治療法の選択肢やその危険性についてある程度理解しておくことが必須である。

 

治療の選択肢を考え出すことが医師の仕事となった.

 

医師は,こういった考え方は自分たちを単なる技術者としてしまうもので,実際起きている複雑な医師−患者の相互関係の正確に描写していないと主張した.

 

不幸にも,医師の家父長主義対患者の自律性という構図になった.

 

患者の自律性に基づいた見解に反対する医師は,家父長主義を主張しているとされ,そこに中道は存在しないように思われた.

 

この状況に前進が図られたのは.医師−患者関係における代わりとなる概念のより詳細な記述が提示されてからである.

 

提示されたのは4つのモデルである。 

 

このモデルは,前述したような2つの選択肢の中からの選択に比べて,より多くの医師−患者関係に適用される.

 

患者の価値観(patient value)は定まったものや明確化されたものではなく,これから明確化する必要がある.

 

さらにまた,これらの選択肢が患者の価値観をどのように高めるのか,あるいはこれらの選択肢によって患者の価値観がどのように修正される必要があるのか,よく考慮される必要がある.

 

このような医師−患者関係の解釈(interpretive),協議(deliberative)の概念は,理想に対してより正確で矛盾がないものと考えられている.

 

 

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