ランダム化試験の歴史【統計解析講義応用】

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ランダム化試験の歴史|【統計学・統計解析講義応用】

ランダム化試験の歴史【統計解析講義応用】


目次  ランダム化試験の歴史【統計解析講義応用】

 

 

ランダム化試験の歴史

 

医学研究の歴史は初期エジプトと中国文明へと遡る.

 

しかし,近代の臨床試験は,1926年のSir Ronald Alymer Fisher による収穫量を調べる農場実験に取り組むランダム化試験の開発に続く20世紀までみられなかった.

 

最初の真のランダム化臨床試験は,一般的に結核治療のためにストレプトマイシンの有益性を調べたBritish Medical Research Council (英国MRC)による1948年の研究であると考えられている.

 

百日咳ワクチンの有効性を調べる他のMRC試験では,数カ月前に被験者をランダム化し始めていた.

 

MRCの統計家であるSir Austin Bradord Hillはこれらの2つの試験に関与していたが,ランダム化デザインを確保した.

 

発表されたうちの1つのストレレブトマイシン試験は,臨床試験の歴史の中で「分岐点(watershed)」として引用された.

 

これらの試験のどちらも,ランダム化の要素を初めて用いたものではないが.後に述べるように.どちらの試験においても重要なイノベーションは,バイアス群の選択と臨床観察に影響しないように治療の割付けを隠したランダム化の実施である.

 

1937年に連載された彼の影響力のある論文において,Hillは治療割付を隠す(concealment)こと含めた近代的なランダム化比較臨床試験を特徴づける多くの原則を概説した。

 

実際に,おそらく分岐点となるストレプトマイシンの試験より前にランダム化の要素を用いたであろう多少の試験が文献にみられる.

 

1931年Doullらはかぜ(感冒)の予防に対する放射線治療(irradition)の効果を評価する試験結果を報告している.

 

この試験では,異なる色のサイコロは,異なる治療群を示した.

 

被験者の名前をアルファベット順に並べ,サイコロを「ランダム」につぽから取り出し,その色によって遂次的方法(sequential manner)で被験者の割付けを決めた.

 

同様の方法は,妊娠子癇前症(pregnancy preeclampsia)の予防のためのビタミン補給を評価する試験で被験者の女性を2つのグループ分けるのに用いられたと1937年に記録されているJoseph Bell (1930年代後半から1940年代に入念にデザインされた百日咳ワクチン(pertussis vaccine)の一連の試験を実施したもう1人の革新的な臨床家)は,治療を割り当てるために,偽ランダム化,続いてランダム化の方法を用いた.

 

彼の初期の試験は,「ランダムな」方法で被験者を群に分けるために,彼らの姓(last name)の文字を用いた.

 

そして. 1941年,おそらくBellは,ランダム化の使用を文書化した最初の対照試験について報告した.この試験では,乱数表(random numbers)が被験者を2つ「同質の群」に分けるのに用いられた.

 

1930年代および1940年代にランダム化試験の発展に先だって,偽ランダム化試験の多くの初期の例があった.

 

Hill自身は,彼の初期の論文の中で,交互治療群割付をランダム割付と同等とみなしていたが,後に彼は,真のランダムプロセスには盲検化の維持が必要であると認めた。

 

交互割付方法には最初の治療割付だけが本当にランダムであり,だれか1人の被験者が非盲検ならば,全群の治療割付は明らかになるといった欠点がある.

 

Ambersonら(1931)は,臨床試験の実施においてランダム化の何らかの方式を用いた最初の人物として名を残している.

 

結核治療のためのサノクリシン(sanocrysin)の有効性を調べる試験において,24名の被験者が,2つの同数の比較群に分けられた.

 

そして,1回コインを投げて.一方を治療群に.もう一方を比較群に割付けた.コイントスの前に群をつくることによって,研究者も被験者も,どの群が最終的に治療を受けるについてわからない.

 

おそらく,このアプローチ.研究者または被験者の選択によって異なった治療に割り付けられることを防ぐ効果があった.

 

にもかかわらず,2群はランダムに構成されていないし.被験者の主要な背景において2群問で意図しない,または系統的な違いが起こる.

 

ランダム化試験の導入に続いて,多くの個人や施設は.時として非常に熱心に討論し,数十年間における医学研究への適応に役立った.

 

読者には,20世紀広範囲起こった医学だけでなく,この時代の多くの分野で,実験的なプロセスの魅力的な進化を探求するよう勧める.

 

この間統計学は,科学的なプロセスの進展において,重要な役割を持っていた.

 

「The Progress of Experiment! とD.SalsburgのThe Lady Tasting Tea』(邦訳:統計学を拓いた異才たち)は,このテーマに関する多くの興味深い文献のうちのまさしく2つである.

 

今日,ランダム化比較試験は新たな介入の評価のためのゴールドスタンダードである.

 

初期のいくつかの試験で見られるように,ランダム化割付の成功は,用いたランダム化の方法によって決まる.

 

偽ランダム化の方法は,割付の際の意図的でないパターンと被験者選択の際の後付け的なバイアスの影響を受けやすい.

 

次の2つのセクションでは,ランダム化割付をうまく実施する,または適応する方法を示す.

 

ランダム化の方法

 

我々は,ギャンブルや宝くじは言うまでもなく,日常生活の中で,例えば,フットボールの試合前のコイントス,ボードゲームで投じるサイコロ,いくつかのコンテストにおける帽子の中から引く名前など,ランダム化をよく知っている.

 

これらの場合のランダム化の目的は,公平ではあるが予測不可能な方法で,結果を求めることである.

 

 

単純ランダム化

 

単純ランダム化(simple randomization)では.それぞれの被験者は他の被験者の治療割付にかかわらず,事前に決定した確率に基づいて,治療にランダムに割付けられる.

 

一般的なデザインはそれぞれの治療群に同じ確率を持って割付ける.

 

Theodoreらのてんかんに対するプラセボコントロールフェルバマート(felbamate)単独投与試験のような2群間比較試験においては,ランダム化の結果は,試験でそれぞれの被験者にコインが表(H)を示した時,被験者を治療群に割付け,裏(T)を示した時,被験者をプラセボに割付け,公平なコイントスと一致する.

 

このような8の治療に対する割付のランダム化の順序はHH THTTH 7のようになる.

 

平均的に単純ランダム化はそれぞれの群におおよそ同数の被験者を割付とするにもかかわらず,同数の群ができる保証はない.少数被験者の試験において,大きな不均衡ができる可能性がある.

 

例えば,18回のトスの順序はTHTTHTTTTH 7 7 TTHTTTで,4回の表と14回の裏といった大きな不均衡となる.

 

極端または非常に極端なこの不均衡となる確率は0.03以上である.

 

すなわち,このような不均衡を観察する可能性が3%ある.

 

例数が18のような小さな試験で.単純ランダム化を用いた場合,このような大きな不均衡が起こる確率は小さいが,無視できない.

 

他のランダム化手順は,このタイプの不均衡を起こす確率を小さくしたり,排除して,表裏の順で発現する傾向を防ぐために開発された.

 

ブロックランダム化

 

ブロックランダム化(block randomization)法は,被験者の一定数が登録された後に,被験者の事前に決められた割合をそれぞれの群に割付けることを確実にする.

 

この方法はまた,置換ブロックランダム化(permuted block randomization)とも呼ばれ,被験者がランダムに置換された治療割付のブロックを構成していると考えることができる.

 

ブロックランダム化は各群の被験者の割合を常に期待する割合に可能な限り近づける.

 

我々はいくつかの時点で蓄積されたデータをしばしば解析するため,このことは重要である.

 

それぞれの解析の際,なるべく近い均衡を確保することが有効である.

 

以下にブロックランダム化の例を示す.

 

2つの同サイズに設定された治療群と4のブロックサイズの場合を考える.順序HHTT THTH THTH HTTH HHTT THHTは,このブロックサイズによってランダム化される

 

24の治療割当ての1つのランダム化順序である.

 

4つの治療割付を完全に実施すれば,2群に割付けられた被験者は全く同数になる.

 

加えて試験が予定より早く終わったとしても各群における例数の不均衡は2の違いである.

 

このランダム化の手順は表裏の順で発現する傾向の確率をなくす.

 

この特徴は特に有用である.

 

なぜなら,もし経時的な傾向があるならば,すなわちランダム化した群の被験者の特性の1つにおいて,不運にも一方の群に連続して割り付けられると,その特性のために群間で不均衡が起こる可能性がある.

 

この一方の群に割り付けられる不均衡は,群間での違いの結果に影響を及ぼす可能性がある.

 

より明白に,もし結果が季節に関与するなら,例えば,インフルエンザの予防を調べる試験では,そして発生の少ない春や夏に新しい治療群へ被験者を多く割り付けられると,新しい治療群に有利なバイアスの含んだ結果となる.

 

これはまさに季節に依存している.

 

上記の例からわかるように,2群間は,治療割付のブロックが完全である場合にのみ,均衡がとられている.

 

このようにブロックサイズを選択するときに考慮する良い基準は,被験者数である.

 

すなわち不完全なブロックによる不均衡は,それぞれの治療群の大きさに比べて小さい.

 

また,一般に.ブロックサイズを治療群の数より大きくしておくことが望ましい.

 

例えば,もし.現在の被験者の割付群が何かの理由で知ることとなった場合,次の被験者の治療割付が推測できるので,2群の試験でブロックサイズを2とするのは避けるべきである.

 

置換ブロックランダム化は,しばしばランダムに選ばれたブロックサイズ(例えば,ブロックサイズ4と6が同じ確率で出現する)を用いる.

 

様々なブロックサイズを用いると,もう1つの隠蔽を与える.

 

なぜなら,それは治療割付の規則を推測することをより困難にするからである.

 

この隠蔽をうまく行うための付加的な方法として,ブロックサイズを何度も繰り返すべきでない.

 

また,ブロックサイズをプロトコールまたは治験手順書に記述すべきではないと言われる.

 

限られた関係者のみにアクセスできる内部資料の一部にすべきとの考えもある.

 

 

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