フェーズ2(第2相):研究デザインと計画の相|【統計学・統計解析講義応用】
フェーズ2(第2相):研究デザインと計画の相
量的研究プロジェクトの第2の主な相では,研究者は,研究設問をあつかうための方法と手順について決定を下し,実際のデータ収集法について計画する。
ときに,研究設問の性質からおのずともちいる方法が決まるが,たいてい研究者は十分な柔軟性をもって創造的に多くの決定を下さなければならない.
これらの方法論の決定は,通常,研究結果の妥当性と信頼性にきわめて重要な意味をもっている.
研究データを収集し分析するためにもちいた方法に重大な不備があると,研究から得たエビデンスにはほとんど価値がないことになる.
ステップ6:研究デザインの選択
研究デザイン(research design)は,研究する問いに対してどのようにして答えを得るか,研究のプロセスで直面する困難にどのように対処するかについての全体にわたる計画である.
量的研究には,実験デザイン,非実験デザインを含む多岐にわたる研究デザインがある.
研究をデザインするにあたって,どのデザインを採用するか,そして偏りを最小化し,研究結果の解釈可能性を高めるために,どのコントロールが使えるかを研究者は特定する.
量的研究では,研究デザインは,外生変数を緊密にコントロールし,高度に構造化される傾向にある.
研究デザインは,研究の他の側面をも示す.
たとえば,対象を測定し観察する頻度,比較のタイプ,研究の場などである.研究デザインは,基本的に研究の構造上の基幹となる.
ステップ7:介入のためのプロトコルの作成
実験研究では,研究者は積極的に介入し独立変数をつくる.
つまり,標本となった人々はそうでない人とは別の治療法を受け,別の状態にある.
たとえば,高血圧症治療におけるバイオフィードバックの効果の検証に関心があるならば,独立変数はバイオフィードバックで,他の治療法(例:リラクゼーション療法)もしくは無治療と比較する.
バイオフィードバック治療には何が必要か(例:治療法を管理するのは誰か,治療法の頻度や期間はどれくらいか,もちいる器具は何か,など),そしてほかに想定される状態は何か,研究のための介入プロトコル(intervention protocol)を正確につくって明確にする必要があろう.
プロトコルを明確にあらわす目標は,各集団内のすべての対象を,同じ方法で治療することにある(非実験研究ではもちろん,このステップは必要ない).
ステップ8:研究対象となる母集団の特定
対象を選ぶ前に,量的研究者は,研究参加者の特質を知っている必要がある.
研究者および研究結果を利用する者はまた,研究結果が誰に向けて一般化できるか知らなくてはならない.
このように,量的研究を計画する段階で,研究者は研究対象となる母集団を特定する必要がある.
母集団(population)という用語は,一連の特性が一致するものの総称または全体を指す.
たとえば,登録ナース(RN)であることと米国に住んでいることを関心ある研究の属性として特定したとしよう.
その場合,母集団は米国に住むすべての登録ナースから成り立つことになる.
同じように,母集団を「カナダにいる10歳未満のすべての筋萎縮症児」,または「マサチューセッツ総合病院における2002年度の勤務交代シフトの全記録」と特定することもできる.
ステップ9:標本抽出(サンプリング)計画のデザイン
研究は,母集団の一部である,対象の標本(sample)に頼っていることが多い.
標本をもちいる明白な利点は,母集団からデータを収集するよりも実際的であり,費用がかからないことである.
しかし,選ばれた標本が,母集団の行動,特性,症状,信念を適切に反映していないかもしれないという危険がある.
標本を得るのにさまざまな方法をもちいることができる.
これらの方法は,費用,労力,必要な技能などの点でまちまちであるが,それらの妥当性は同じ基準,つまり選ばれた標本の代表(representativeness)の度合いに基づいて評価する.
すなわち,量的研究にとって標本の質は,研究に関連する変数についての母集団を,その標本がどれだけ典型的にまたは代表的にあらわしているかによる.
洗練された標本抽出を行えば,代表性の高い標本が得られる,もっとも洗練された標本抽出法を,確率標本抽出(probability sampling ; 無作為抽出)といい,対象選択に無作為法をもちいる.
確率標本抽出では,母集団のすべての成貝が,その標本に組み込まれる可能性を同等にもつ.
一方,非確率標本抽出(nonprobability sampling ; 有意抽出)では,母集団のどの成員にも選ばれる保証がなく,したがって偏った(biased)標本(非代表的な標本)となる危険性が高くなる.
標本抽出計画(sampling plan)のデザインには,標本抽出法の選択,標本の大きさ(つまり,対象の数)の特定,対象を募集する手続きの作成が含まれる.
ステップ10 : 研究する変数の測定法の特定
量的研究者は,研究する変数をできるだけ正確に観察する方法や測定する方法を開発しなくてはならない.
概念的定義に基づいて,研究者は変数を操作し,データを収集する適切な方法を選んだり,あるいは自らデザインする.
いろいろな量的データの収集方法がある.臨床看護研究では生物学的測定(biophysiologic measurement)が重要な役割を果たすことが多い.
データの収集方法としてよく知られているもう1つの方法に自己報告法(self-report)がある.
この方法では,対象に感情,行動,態度,個人的特性について質問する(たとえば,研究スタッフとの面接で).もう1つの技法は観察(observation)である.
この方法では,研究者は人々の行動のある側面を観察し,それを記録してデータを収集する.
データ収集の方法は,研究対象を規制した構造の度合いによってさまざまである.
量的アプローチは高度に構造化されており,どの対象からも同一の情報を正確に得られるような明確な測定用具(instrument)をもちいる.
研究者が自分で測定用具を開発しなければならない場合もあるが,他の研究者が開発した測定用具をそのまま使用したり,一部改変して応用するほうが多い.
研究する変数を測定し,データ収集計画(data collection plan)を立てることは,複雑かつ挑戦的な過程であって,大いに創造力と選択力を発揮できる.
データ収集計画を最終決定する前に,研究者は,選択した方法が主要な概念を正確にとらえるかどうかを慎重に評価しなければならない.
ステップ11 :人/動物の権利を守る方法の開発
動物を対象とする研究もあるが,大部分の看護研究では人を対象とする.
どちらの場合も,倫理的原則に則って研究することを保証する手順を開発する必要がある.
たとえば,対象が自発的意思から研究に参加したことを記録する書式をつくる必要性は高い.
研究計画のすべての側面を検討して,対象の権利を適切に保護しているかを判断しなくてはならない.
よくもちいる検討方法に,外部委員会への正式提示がある.
ステップ12 : 研究計画の仕上げと再検討
研究者は,実際の研究データ収集の前に,計画の円滑な進行を保証する種々の「テスト」をすることが多い。
たとえば,識字能力が平均以下の人々が文書資料を理解できるかみきわめるために,資料の読みやすさを評価することがある.
または技術的な用具が正確に機能するかテストする必要もあろう.
質問紙法を使う場合は,回答者が質問を理解しているか,またはある質問を不愉快に感じているかを知ることは重要である.
質問紙法のプレテスト(pretesting ; 事前テストまたは予備テスト)という.
研究準備の最終段階で,研究者はデータ収集を担当する人々にどのような訓練を施すか決めなくてはならない.
研究者がその研究計画に気がかりがある場合,パイロット・スタディ(pilot study ; 予備的研究)をする.
これは,本研究の小規模版または試行である.
研究計画を実行する前に,実質的,臨床的,方法論的な意見を求めて,ふつう,研究者は同僚やコンサルタント,または他の評価者に研究の批評を依頼する.
研究者が,研究に助成金を得ようとする場合は,一般に,提案書(proposal ; 企画案またはプロポーザル)を助成機関に提出する.
そして通常,検討者は提出された計画の改善を提案する.
教育課程や学位の要件の一部として研究を行う学生たちも,指導教員に自分たちの計画に目を通してもらわなければならない.
しかし,他の状況下においてさえ,研究者は,プロジェクトの外部の人間に,予備段階の計画を評価してもらい,十分に助言を受ける.
斬新なとらえ方をする熟練した研究者は,それまで見過ごしているかもしれない,陥りやすい弱点を見つけることのできる貴重な存在となることが多い.
関連記事