IRBによる研究審査【統計解析講義応用】

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IRBによる研究審査|【統計学・統計解析講義応用】

IRBによる研究審査【統計解析講義応用】


目次  IRBによる研究審査【統計解析講義応用】

 

 

IRBによる研究審査

 

研究者が研究を計画する際には. IRB審査を免除されない.もしくは迅速審査の基準を満たさない場合,IRBによって開催される審査に研究プロトコールを提出する.

 

プロトコールは,研究者による研究内容の記載がなされ,被験者保護に関する問題も含まれる.

 

以下の節では, IRBの構成に関する規制やIRBによるヒトを対象とした研究の審査および承認の規準について述べる.

 

IRBの構成委員

 

連邦規則集は,最低限のIRBの構成委員の要件について基準を定めている.

 

すべてのIRBは少なくとも5人の委員で構成されなければならず,委員は科学的な領域・科学以外の領域についての専門的な知識を持つ者である必要がある(45 CFR 46.107).

 

被験者の権利と福祉を保護するためのIRBによる助言や勧告について,包括的なアプローチを育くみ,尊重を促すために, IRBの委員はそれぞれの専門領域と文化的背景,性別における多様性が期待される.

 

IRBは通常.研究の場もしくは近くに位置しているので,委員は研究の実施や被験者保護に影響を与えるような特別な状況に対する専門知識や配慮が要求される.

 

例えば,研究施設は地理的な場所によって状況が異なり,しばしば文化的に異なるグループから成っていることがある.

 

例として,米国が資金提供するプロトコールに他国の被験者を参加させる場合,米国のIRBよりもむしろ/もしくは米国に加えて,現地のIRBの方が研究に関連した特定の文化的,宗教的,その他の問題を見出し解決するのを助けるのに重要であるだろう.

 

それぞれのIRBは,少なくとも,科学的な領域に主に関心のある人物を1人,科学以外の領域に主に関心のある人物を1人, IRBの他に研究施設と関連がない人物を1人,含む必要がある.

 

また,委員の専門性を超える,もしくは専門性に付帯する事項について審査する必要とする場合, IRBは審査の手助けをしてくれる特別な領域の専門家を招聘することができる.

 

これらの委員の適格要件は,ヒト被験者の保護は.研究に直接関係のない多様な職種から成るグループによって,客観的に研究活助の審査がなされることでより良く行われるという信条に基づいている.

 

 

IRBによる研究審査の基準

 

研究を承認するために, IRBは研究が最低限の要件を満たすことを判定する必要がある.

 

すべての臨床研究者,特に研究代表者(PI)はこれらの要件をよく知り,どのように研究プロトコールに適用するかを理解する必要がある.

 

1.提案された研究デザインが科学的に妥当であり,被験者を不必要なリスクにさらすものでないこと.研究プロトコールの本質,内容,科学的なデザインは,研究プロトコールにおける非常に重要な事項である.

 

最低限. IRBは研究仮説が明確であること,そして研究デザインが適切であることを判断する必要がある.

 

研究プロトコールがうまくデザインされていない場合や,研究者が意義のある情報を得る可能性が低い場合には,被験者を少しでもリスクや不快,不自由にさらすことは倫理的に正当と認められない.

 

しかしながら. IRBは科学的な専門性を有する委員を含むものの,主に科学的な審査を行う委員会としては設置されていない.

 

多くの施設では,プロトコールはIRBの前に科学的な予備審査を受け, IRBの審査に足る十分なデザインであることが確認される.

 

予備審査を行うことにより. IRBでは被験者の保護という重要な点に集中して審査を行うことができるため,望ましいアプローチである.

 

いずれにしても, IRBは科学的に妥当と判断されないブロトコールを承認することはない.

 

2.被験者が研究に参加することで得ることのできる便益および研究を行うことで闡待される結果の璽要性と比べて,被験者がさらされるリスクが合理的であること.

 

IRBは,検討中のプロトコールヘの研究参加によるリスク,不快,負担を判断することが要求される,「リスク」とは研究に参加した結果として生じる,危害や傷害(身体的,精神的,社会的.経済的)の確率である.
リスクは大きさが変化するが,最小限のリスクのみが連邦規則によって定義されている.

 

また. IRBは研究に関連した利益を特定することも求められている.

 

「便益」は規則では定義されていないが,価値のあるもしくは望ましい結果と考えてよい.

 

一般的に,研究による便益は次の2つに分類される.

 

(1)個々の被験者に直接もたらされる便益(例えば,疾患や障害による症状の治癒や改善).

 

(2)研究を通じて知識の進歩がもたらされることによる他の人(例えば,社会全体,将来の患者など)への便益,である.被験者が研究に参加することによって直接便益を受けるとすれば,被験者は治療や診断的検査を受けていることになるので,リスクや不快はある程度高くても正当化されうる.しかしながら,新しい治療や,まだ有効性が確認されていない治療の研究においては,リスクに対する便益の比は他の代替治療で起こりうるものと同等か比較可能なものである必要がある.それとは逆に,健康なボランティアを対象とする研究のように個々の被験者が直接便益を得る見込みがない研究においては. IRBは,一般化可能な知識を得るためだけに行われる研究に関連した治療や介入によって起きる被験者へのリスクが,倫理的に許容できるかどうかを評価しなければならない.例えば. NIHの内部研究プログラム(IRP)では. IRBは研究に関連した便益とリスクを求められている.

 

3.被験者のリスクが最小限に抑えられていること.リスクを最小化するためにIRBがとる努力については,前に述べた基準#1と#2と密接に関連しており,これらに沿って議論されることが多い.

 

研究に伴うリスクが正当化され,避けられない場合においても,リスクは減らすことができ,効果的に管理しうる. IRBはリスクが可能な限り最小限に抑えられていることを保証する責任がある.

 

リスクを最小化する方法としては,これに限定されるものではないが,以下を確認することが含まれる.

 

(1)危害の確率および/もしくは重症度を減らす適切な保護手段がプロトコールに組み込まれること.

 

(2)データのモニタリングが適切であること.

 

(3)研究者が研究対象となっている分野に適任であること,である.

 

データの安全性とモニタリングについては,第三者である個人もしくは委員会(DSMC,効果安全性評価委員会)によるものが適切であろう.

 

しかしながら. IRBが責務を果たし,必要に応じてDSMCと効果的にやりとりすることを確実とするには,相当な努力を必要とする.

 

4.被験者の選択が公正であること.正義の倫理原則では,研究の負担と便益の両方が公平に分配されることが求められ,被験者の公正な選択を要件とすることが根底にある.

 

一方, NIHが研究に資金提供する場合には,疾患,障害や研究下の状態に置かれることのリスクがあるすべての人に対して,何らかの便益が見出されることが期待される.

 

それゆえに,女性や少数民族を侵す疾患や障害や状態を対象とする研究においては,適切な代表者を選び出すことが特に重要である.

 

それに対して, IRBは被験者(例として,貧困者,人種的もしくは民族的な少数派,施設収容者など)が.研究対象となっている問題と直接関連のある集団であるという理由で選ばれているというよりも,単に容易に利用できるとか.弱い立場であるとか,扱いやすいといった理由で組織的に選ばれているということがないように確認する必要がある.

 

研究プロトコールで研究の対象となる適切な被験者群を定義する際に,科学的なデザインや被験者が被る可能性のあるリスク,直接得られる便益の見込み,実行可能性や公正さについて研究者は検討することになる.

 

一般的に,被験者選択は,その性別/民族/人種のカテゴリーにおけるプロトコールで研究対象とされる疾患や状態のリスクを考慮に入れた理論的根拠に基づいて行われる. IRBは研究プロトコールにおいて提案されている被験者選択が科学的,倫理的に適切であるかどうかを判断することが求められる.

 

 

5.インフォームド・コンセントが被験者もしくは法的に権限を与えられた代理者から得られること.

 

インフォームド・コンセントを得るための要件にはかなりの法的基盤があるが,倫理的にも基本的に欠かすことができない責務である.

 

インフォームド・コンセントを通して,研究者は被験者の自己決定権を尊重するという研究を行う上での義務を果たす.

 

例えば,1人にしておくこと,自由に選択すること,個人的な情報は被験者が許可する方法でのみ共有することである.

 

IRBがプロトコールを審査する場合,かなりの時間を同意説明文書の審査に割く. IRBの役割は,同意説明文書が同意に必要な要件を漏れなく含んでいるかを確認することである.

 

また,読解力のレベルに応じて杳かれているか,体裁は整っているか,これから被験者となる人に理解可能であるかを確認する.

 

しかしながら,実際的な観点からいえば.同意説明文書に署名することは,被験者が研究プロトコールヘの参加について行う意思決定プロセスの1つの要素でしかない.

 

予想される被験者が意思決定プロセスは様々な要因によって影響を受ける.

 

(1)同意説明文書,

 

(2)意思決定のプロセスにかかわる専門家の知識やスキル(例えば,研究者や看護師).

 

(3)被験者自身(例えば,医学的な状態や精神的な状態,一次言語(母国語),民族的もしくは文化的な背景,経済状態,その他個人的な要素).

 

(4)インフォームド・コンセントのプロセスが行われる状況(例えば,救急治療室,外来診察室,大学などの学究的な施設).IRBは同意説明文書の審査に加えて,同意を得る個人がこの重要な責任を負うための資格要件を満たすことを確認することによって.インフォームド・コンセントのプロセスに影響を与えうる.

 

例えば,プロトコールヘの参加にあたって,誰がインフォームド・コンセントを得るか,どのような状況で得るかということを,IRBは把握しておく必要がある.

 

研究の複雑さやリスクに応じて,若手の研究者よりも,経験ある上級の研究者による同意取得が求められる場合もある.

 

またIRBは,めったにないが,同意取得のプロセスや研究そのものを自ら監視したり,第三者機関に監視させる権限を行使する場合がある.

 

研究参加のためのインフォームド・コンセントを得ることは複雑なプロセスである.

 

それゆえに,長年にわたり関心や議論,出版の対象となってきた.

 

1966年に, Henry Beecher博士は,ヒトを対象とした倫理研究における2つの最も重要な要素は,1つがインフォームド・コンセントであり(博士は,インフォームド・コンセントの取得が不可能でないものの困難な例もあると認めている),もう1つは「知的で,情報に通じた,良心的で,思いやりのある,信頼できる研究者の存在」であるとしている.彼の考えは今日でも真実を表している.

 

被験者へのインフォームド・コンセントを推進する上で. IRBの役割は重要ではあるが,実際に十分な情報に基づいた有効なインフォームド・コンセントを確実に行うことは,基本的には同意を得る研究者の責任なのである.

 

6.被験者が強制されやすい,もしくは影響を受けやすい弱い立場にある場合,追加的な保護手段が必要とされること.

 

連邦規則集ではIRBに,一部の,もしくはすべての被験者が,子どもや服役者,妊婦,精神障害者,経済的もしくは教育的に不利な人々のような.強制されやすい,もしくは影響を受けやすい弱い立場にある場合には,被験者の権利と福祉を守るために.追加的な保護手段を研究に含むよう命じている(45 CFR 46.111[b]).

 

しかしながら,実践的な指針は,妊婦を対象とする研究(45 CFR 46, Subpart B),服役者を対象とする研究(Subpart C),子どもを対象とする研究(Subpart D)を除いてほとんどない.

 

服役者や子どもを対象とした研究についての最近の指針は. IRBがこのような研究を審査するのに役立っている.

 

そうでない場合は, IRBは研究者との協議の上,被験者が強制されやすい,もしくは影響を受けやすい弱い立場にある可能性がある場合には,検討中の特定のプロトコールに適切な追加的保護手段を加えることを要求する.

 

弱い立場にある被験者は,相対的もしくは絶対的に自分たちの便益を守ることができない人々である.

 

別の言い方をすれば,「十分な力や能力,知能,資源,強さがない人々や,インフォームド・コンセントに関する交渉を通じて自分自身の便益を守るために必嬰とされる資質を十分に持っていない人々」である.

 

例えば,長期にわたって,もしくは重篤な標準的治療に抵抗性となった疾患に罹患している人や,標準的治療がないような人は,弱者として配慮すべきである.

 

このような病気の人々はインフォームド・コンセントを行う知的能力は有しているかもしれないが,同意の妥当性については配慮しなければならない.

 

選択肢が著しく制限されている場合には,自暴自棄になって,直接の便益がほとんど期待できそうにないにもかかわらず,進んで重大なリスクを取ろうとするかもしれない.

 

こういった状況は必ずしも不適切ではないものの,研究者およびIRBは,終末期患者や具合の悪い人々を対象とした研究のインフォームド・コンセントを行う際には,十分に注意を払う必要がある.

 

例えば, IRBはソーシャルワーカーや研究に関係していない医師,研究被験者団体などの「利害関係のない」人物に.今後の研究被験者についてや,他の臨床医学的もしくは研究的な代替案はないかなどを議論するよう要請することもある.

 

精神障害者を対象とする研究,認知的障害を持つ被験者を含む研究や緊急の状況で行われる研究に対する追加的な保護についても注意を払わなければならない.

 

7.被験者のプライバシーと守秘義務が最大化されていること.

 

「守秘義務(confidentiality)」とは,個人が信頼関係の中で明らかにした情報を取り扱うことをいう.

 

また,その人の許可なく,もともとの開示情報に対する理解と矛盾した方法で,秘密を他人に漏らすことはないということが期待されている.

 

「プライバシー」とは,その大自身の(身体的,知的,もしくは行動的)情報を他人と共有することにおいて,共有範囲やタイミング,周りの状況を制御すること,と定義される.生物医学的・行動研究は個人のプライバシーを侵害したり,守秘義務違反に至ることがある.

 

ある状況においては,守秘義務違反は被験者を重大な危害のリスクにさらしうる.

 

例えば,研究者が被験者に関する情報を得た場合,情報内容が研究者によって暴露されると,被験者の職を脅かしたり犯罪的な行為に対する訴追を受けることになるかもしれない.

 

また別の状況において,公的行動を観察したり記録するような場合には,プライバシーの侵害はほとんどないか,害となることはないだろう.

 

しかしながら,守秘義務の必要性は,特定の被験者に関するデータを収集するほぼすべての研究において存在する。

 

大部分の研究で,日常業務の中で守秘義務を果たすための注意事項は,個人識別番号のコード置換え,コンピュータ・シートや他の書類の適正な廃棄,個人を特定できるデータへのアクセスの制限,研究情報の鍵のかかったキャビネットでの保管,などである.

 

大部分の研究者は,データの守秘義務を維持するために日常的に行うこれらの注意事項に慣れている.

 

少なくとも. IRBはプロトコールを審査しているときには,研究情報の機密性が可能な限り保持されるよう適切な保護を行うという保証をしなくてはならない.

 

機密保持手段の種類や厳格性は研究で収集された情報の種類による.どのような場合でも,守秘義務が「完全に」果たされるように保証しようとすることは避ける必要がある.

 

事実,守秘義務の限界については明確にしておかなければならない.

 

例えば,連邦政府当局者は,研究が行政プログラムのルールや基準を遵守して行われているかを確認するために,インフォームド・コンセントの書類や個人の診療録を含む研究記録を査察する権利を有している(例えば,臨床試験記録のFDA査察).

 

性的行動や犯罪的活氤疾患の遺伝傾向のような取り扱いが難しい事項に関するデータを集めるような研究においては,より綿密な機密保持手順が必要となる.

 

他にも連邦,州,もしくは地域の法律が,健康に関連する情報の守秘義務と機密保持を取り扱うことがある.

 

例えば. 2003年に施行された医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996, HIPAA)は,患者に自分の健康情報に関する権利を付与し,誰がこの情報を開示・利用できるのかについて規則や制限を設けている.

 

HIPAAは「プライバシールール(Privacy Rule)」とも呼ばれ,健康情報に関する個人情報が濫用される可能性について国民の関心が高まっていることに対する連邦政府による法的対応であった.

 

プライバシールールは,個人の健康に関する情報(private health information. PHI)と呼ばれる健康情報のカテゴリーを設け,情報は,特定の状況下においてのみ,もしくは特定の条件下において利用されたり.他人に開示されることがある.

 

PHIには,患者の診療記録や検査結果など,医師やその他の医療従事者が一般的に患者の個人健康情報と見なすものが含まれている.

 

この規則は.「対象医療従事者」として認定された研究者によって収集された臨床研究の被験者についての識別可能な健康情報についても適用される.

 

それゆえに,HIPAAの対象研究者にとって,この要件をよく知ることは,被験者の守秘義務を保護する上で重要となる.

 

 

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