看護研究のパラダイム【統計解析講義応用】

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看護研究のパラダイム|【統計学・統計解析講義応用】

看護研究のパラダイム【統計解析講義応用】


目次  看護研究のパラダイム【統計解析講義応用】

 

 

看護研究のパラダイム

 

パラダイム(paradigm)は1つの世界観であり,現実世界の複雑さについての一般的な認識である.

 

人間探究のパラダイムは,基本的な哲学的疑問にどう答えるかによって特徴づけられることが多い.

 

・存在論的:実在性とは何か.

 

・認識論的:その探究者と探究される事象との関係は何か.

 

・価値論的:その探究での価値の役割は何か.

 

・方法論的:その探究者はどのように知識を得るべきか.

 

看護分野での学問的探究は,主に2つの大きなパラダイムで導かれ,それらは看護研究にとって正統性を有している.

 

実証主義パラダイム

 

実証主義(positivism)は,看護研究のためのパラダイムの1つとして知られている.

 

実証主義は,19世紀の思想に起源があり,コント(Comte),ミル(Mill),ニュートン(Newton),ロック(Lock)のような哲学者によって導かれた.

 

実証主義は,人文科学では理性と科学性を強調するモダニズム(modernism)といわれる広い文化現象を反映している.

 

厳格な実証主義思考を論理的実証主義(logical positivism)ともいい,挑戦され衰退してきたものの,穏和な実証主義の地位は,科学的研究で優勢な力を保っている.

 

実証主義の基本的な存在論的仮定は,研究され知られうる実在が,「まだ知られていないが在る」ということである.

 

その前提(assumption)は,証拠や検証なしに真実と受け入れられている基本的原理を指す.

 

実証主義アプローチの支持者は,自然は基本的に秩序正しく規則的なものであり,客観的実在が人間の観察から独立して存在すると仮定する.

 

いいかえると,世界は人の心の創造物ではないと考えられている.

 

決定論(determinism)という前提は,自然の事象や状況は偶発的,無作為的なものではなく,すべての現象には先行する原因があるという信念である.

 

もしある人が脳卒中になれば,実証主義の伝統にある科学者は,もしかすると見分けられ,理解される原因が1つないしそれ以上あるに違いないと仮定する.

 

実証主義パラダイムの科学者の活動の多くは,自然現象の先行原因を理解することに向けられている.

 

客観的実在に対するその基本的な信念のために,実証主義者は,知識を追い求めるのにできるだけ客観的であることを求める.

 

実証主義者は,調査する現象を汚さないようにするために,研究中できるだけ自分の信念と偏りをチェックしようとする.

 

実証主義の科学的アプローチには,研究される現象の性質とそれらの関係についての研究者の勘を検証するためにデザインされた規則正しい学問的手順をもちいる.

 

 

自然主義パラダイム

 

自然主義(naturalistic)パラダイムはウェーバー(Weber)やカント(Kant)らによって実証主義の対抗運動として始まった.

 

産業革命の目覚めで芽生えたモダニズムの文化的現象に実証主義が反応したように,自然主義はポストモダニズム(post-modernism)と通常いわれている勢いのある文化的変動の所産である.

 

ポストモダンの考えは脱構築(deconstruction),つまり,古い考えと構造をバラバラにすることと,再構築(reconstruction),つまり,考えと構造をともに新しいやり方に組み入れることの価値を強調する.

 

自然主義パラダイムは,看護界で学問的研究をするための主たる代替システムを示している。

 

自然主義の探究者にとって,現実は固定された存在ではなく,その研究に参加している個人が構築したものである.

 

現実はコンテクスト内に存在し,多くの構築が可能である.自然主義者はこのように相対主義の立場をとっている.

 

つまり,もし人々の心に存在する現実について複数の解釈があるならば,構築の根本的な真実や虚偽が判定されうるプロセスではないことになる.

 

認識論的には,自然主義パラダイムでは,探究者と研究参加者との距離が最小であるとき,知識が最大になると考える.

 

探究者と参加者の声と解釈が関心ある現象を理解するのに重要であり,主観的相互作用がそれにいたる第1歩となる.

 

自然主義的探究での発見は,研究者と参加者との相互作用の産物である.

 

パラダイムと方法:量的研究と質的研究

 

概していうならば,研究方法(research method)とは研究を構築し,研究設問に関連した情報を集め分析するために,研究者によってもちいられる技術である.

 

2つの代替可能なパラダイムは,もちいられる研究方法との関係が強い.

 

方法論の区別は,典型的には,実証主義の伝統と強く結びついている蛮的研究(quantitative research)と,自然主義の探究との関連が深い質的研究(qualitative research)という違いに焦点がある.

 

しかし,実証主義者でも質的研究をすることもあるし,自然主義の研究者が量的情報を収集することもある.

 

2つのパラダイムと関連する方法についての検討によって学習を助ける方策として方法の違いがきわだつだろう.

 

実際には,この導入としての検討が示す以上に,2つの方法は重なっていることも多い.

 

「科学的方法」と量的研究

 

伝統的な実証主義の「科学的方法(scientific method)」は,情報を獲得するための秩序ある学問的手順をもちいるものである.

 

量的研究者は現実世界で検証された勘を一般化するのに演繹法をもちいる.

 

研究者は秩序ある系統的な方法で,問題の定義づけ,焦点化された事象への概念の選択,研究のデザイン,情報収集を経て,問題解決へと進むのが典型的なやり方である.

 

系統的(systematic)とは,科学的研究者があらかじめ立てた行動計画に従って一連のステップを論理的に進むことを意味する.

 

最的研究者は,研究をコントロールするようデザインされたメカニズムをもちいる.

 

コントロール(control)は,偏りが最小になり,精度と妥当性が最大になるように,研究状況での状態をよくすることを含んでいる.

 

たとえば肥満,摂生へのコンプライアンス,痛みのような看護研究者にとって興味ある問題は,きわめて複雑な現象であり,多様な力の影響を示すことが多い.
各現象間の関係を分離する際,量的研究者は直接探究の対象でない因子をコントロールしようとする.

 

たとえば,食事と心臓病の関係を探究することに興味をもっている場合には,年齢と性別のような関係するであろう付加的因子のほかに,ストレスと喫煙のような冠状動脈疾患に影響する可能性をもつ他の因子をコントロールする手段をとらなければならない.

 

コントロールのメカニズムは,大きな課題である.

 

量的研究者は経験的(実証的)エビデンス(empirical evidence),つまり,客観的実在に根ざし,人間の感覚をとおして直接的,間接的に集められるエビデンスを集める.
したがって経験的エビデンスは,視覚,聴覚,味覚,触覚,嗅覚をとおして集めることができる観察から成り立っている.

 

皮膚の炎症の有無,患者の心拍数,新生児の体重などはすべて経験的観察の例である.

 

知識の基盤として経験的エビデンスを使うよう求められているということは,研究結果は研究者の個人的信念ではなく現実(リアリティ)に根ざしている,という意味である.

 

実証主義パラダイムにおける研究のエビデンスは必要とされる情報を集めるための形式的な用具を使って,特定化された計画に従って集められる.

 

通常(しかし常にではなく)こうした研究で集められる情報は量的(quantitative)である.つまり,ある種の形式的な尺度での結果であり,統計学的手法で分析される数の情報である.

 

伝統的な科学的研究の重要な目標は,現象を孤立した状態でというよりはむしろ広く一般的な意味で理解することである.

 

たとえば量的研究者は,なぜアン・ジョーンズが子宮頚部がんにかかったかということよりは,一般的にどのような要因がこのがんを引き起こすのかを理解することのほうに関心をもつ.

 

当面の状況の個別性を超越して進むことができるということが,伝統的な科学的アプローチの1つの重要な特性である.

 

研究結果を研究の参加者以上の他の個々人に一般化できる〔研究の一般化可能性(generalizability)といわれる〕度合いが,量的研究の質を評価するために広くもちいられる基準である.

 

量的研究者がもちいる伝統的な科学的アプローチは,探究の方法として重要な地位を享受してきたし,広い範囲の看護問題を研究する看護研究者が生産的に使ってきた.

 

しかし,それは,このアプローチがすべての看護問題を解決できるということではない.

 

量的研究にも質的研究にも共通するただ1つの重要な限界は,研究の方法は道徳的判断や倫理的課題にはもちいられないということである.

 

人間の体験に関するもっとも永続的かつ難解な課題の多くはこの領域に入る(例:安楽死は行われるべきか,中絶は合法か).

 

ヘルスケアにつながる多くのモラルの論点を考えると,看護過程がもっぱら科学的情報にばかり頼っていることはできない.

 

また伝統的な研究アプローチは,測定の問題にも対処しなければならない.1つの現象を研究するために量的研究者はそれを測定しようとする.

 

たとえば,関心ある現象が患者の士気(意欲)であるならば,研究者は士気が高いか低いかとか,ある状態のときのほうが他の状態よりも高いとかを査定したいだろう.

 

血圧,体温のような生理学的な現象についてはかなり正確な測定法が開発されているが,それに比べ,患者の士気,痛み,自己像のような心理的な現象を比較的正確に測定する方法はあまり開発されていない.

 

もう1つの問題は,看護研究は本質的に複雑で多様な人間に焦点をあわせる傾向にあるということである.

 

伝統的な量的方法は,1づの研究では,人間の体験の比較的小さい部分(例:体重増加,うつ状態,薬物依存)に焦点をあわせることがふつうである.

 

複雑さをコントロールし,可能な場合は,直接に研究するよりもむしろ除く傾向にある.

 

そして,この焦点の絞り込みが洞察を曇らせることがある.

 

最後に関連あることとして,実証主義パラダイムで行われる量的研究は,構想が狭く,柔軟でないこと,人間の体験の現実(リアリティ)を完全にとらえることはできない多層の世界(sedimented view)という問題がある,との批判があることを指摘しておく.

 

 

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