話題性|【統計学・統計解析講義応用】
話題性
Christopher Reeve (俳優)が脊椎損傷により.四肢麻痺となった際には,脊椎損傷の研究に関する国民の関心が集まり,ヒト胚性幹細胞の研究をめぐる議論が巻き起こった.
また, Michael J. Fox (俳優)がParkinson病であると診断されたと公表したとき,この疾患に対する公衆の認識と関心は高まった.
ブッシュ(George w. Bush)大統領は,過去の飲酒癖をどう克服したかについて率直に語っている.
公衆は,有名人や彼らの医療の問題について関心が高い.
クリニックで有名人を診ることになるかもしれないし,有名人が病気になり,それが偶然あなたの専門領域であるかもしれない.
たいていの場合,有名人が病気になるとメディアの関心が集まり,彼らの状態についてのコメントを求められる.
通例臨床医は患者についてコメントしないし,診療をしていることさえ公表しないものである.
有名人が例えばAIDSや脳卒中など特定の疾患であれば,その疾患についてもメディアにコメントしないことが得策である.
たとえ疾患について話していたとしても,有名人(の疾患)についてコメントしたこととして認識され.メディアにとっては格好なチャンスとなる.
あなたのコメントは,記事に(不本意に)織り込まれることがあり,思わしくない結果につながることがある.
悲劇と論争
近年で最も多くの議論を集めた研究のひとつが,ヒト遺伝子導入(human gene transfer)の安全性についてである.
高い評価を受けているペンシルバニア大学の遺伝子治療試験に参加した若い患者が死亡したことで,議論が激化した.
その影響は,遺伝子治療の是非を問う開題にとどまらず,全米において臨床試験の安全性について見直す必要性にまで及んだ.
NIHも例外ではなく,厳しい監視下に置かれることになった.
最初にメディアが報道してから,議会により公聴会が開かれ,その内容は報道機関によってさかんに報道された.
その後もメディアは報道を続け,立て続けに公聴会が開かれることになった.
加えて, NIHとFDAによる患者の安全性に関する対応にもメディアが集まった.
全国紙のリポーターに対応することや,公聴会に出席した経験がない臨床研究者や担当者にまでも対応が求められることとなった.
NIH議会,政府と報道機関が,互いに意見交換を行う場合もある.
ヒトES細胞研究(human embryonic stem cell, hESC)の資金提供については,科学と医学における話題の中でも,ここ10年比類ない議論が繰り返されてきた.
hESCの研究だけでなく,あらゆる種類の幹細胞研究に議論は飛び火し. NIHの研究者だけでなく世界中の幹細胞研究者を巻き込む結果となった.
政治的かつ感情的な開題であるだけに,報道機関への対応は,多くの判断と十分な準備が必要であった.
このよう問題の場合には,様々な背景をもつ人が記事を読んでいること念頭において,慎重に言葉を選ぶ必要がある.
hESC研究に対する連邦政府の資金提供に関する法的対処が現在進行中である.
メディアに対応する際には.発するコメントのすべてが法的プロセスに影響を与える可能性を考慮にいれておく必要がある.
インパクト
研究結果の与える影響が大きく,即効性がある場合には,メディアに多く取り上げられる.
具体的な例として. 1990年代後半に,タモキシフェンを内服することで,乳がんの発症リスクを50%減らしたという研究結果が発表された際には,ワシントンDCにある保健福祉省(Health and human services, HHS)のビルで行われた記者会見に100人以上のリポーターを集めた.
また, 2002年にホルモン補充療法に関する結果が発表された際には1,400万人以上の女性に影響があるために,広範なメディア報道が行われた.
また,世界的脅威であったH1N1型インフルエンザは.数年にわたって報道し続けられた.
小規模であったとしても,希少な疾患に対する研究結果は.個人の生命に与える影響が大きいために,メディアの注目を集める.
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